ここは山奥にひっそりと佇む穴場のカフェ
穴場すぎて客はまったくこない
なので普段はマスターである私自身が客なのである
最近 春らしい陽気でぽかぽかしていて外はとても暖かい
この時間からは客に切り替えてツリーテラスのほうで本でも読みながらのんびりと過ごすことにしよう
この時期はまだ枝葉もなく見晴らしのよい斜面側には日差しも差し込み
暖かく 読書をするのにはなかなかに良さそうだ
淹れたてのコーヒーや本などを運び込み今日はここでくつろぐことにするか
ツリーテラスに行く為の 唯一の手段はこの繋がっている橋を渡るしかない
この橋を渡ることで非日常の世界へと切り替わるような高揚感を味わえるので
それがまた良い
この先が神域で結界を通過する儀式にも似たようなものだろうか
今の所 この結界を通れるのはわたし のみとなっている
なぜならば 他に客がきたことがないからなのだが・・・
神域でコーヒーを啜りつつ読書に耽る 罰当たりとは私のことである
しかし天罰が落ちることはない
なぜならば この神域は このように過ごすのを目的につくられた
天空のカフェ 白面亭なのだから
春の日差しはとても心地が良い
眠くなったらこのまま寝てしまっても誰にと咎められることもないだろう
栞を挟み 本を置き
ぬるくなったコーヒーを啜る
椅子に座ったまま伸びをして たまには風景なんかに目を移すのも悪くない
本を閉じたついでなので もう一杯だけコーヒーを淹れなおすことにするか
誰もいない店内で一瞬だけ客からマスターへと切り替え ゆっくりと豆を挽きながら二杯目のコーヒーを淹れる
まるで夢の中の出来事のような気がする時がある
ここは山奥にひっそりと佇む穴場のカフェ 白面亭
キツネのマスターがコーヒーを淹れてくれる不思議なお店
夢の中なら訪れることが出来るかもしれません