ここは山奥にひっそりと佇む穴場のカフェ
通常どうり客はまったくいない
そういえば最近TV番組への出演オファーがあったがそんなものには全く興味がないし
目立つのは苦手なので考える間もなくすぐに辞退の趣旨を伝えた
まったくTVなどに出てしまったらお客が増えてしまうじゃないか!
やはり私には客のほとんどこない寂れた山奥のカフェのマスターが性にあっているのだろう
どうやら今夜は日が落ちたあたりから雪が降り始めるらしい
雪が積もると交通が麻痺してしまって帰宅することが困難になるだろう
この分だと家には帰れなそうもないので今晩ここに泊まっていくための準備でもしておくか
しかたないこれもカフェのマスターとしての宿命
お客様がこなくとも閉店時間まではしっかり営業しておこう
その結果、家に帰ることができなくなったとしてもよいではないか
全てはお客様を想ってのことだ!
よし!
どうせ客なぞこないので早速寝床作りをしてみようかな
万が一、客がきたとしたらベットメイキングの邪魔になるのでお帰り願おう
なぜならお客様のために店を開けておくことにより今晩ここで寝泊まりしなくてはならな
く、そのための準備中だからだ!
思っているよりもマスターとしての責任とは重いものなのだ
カウンターの奥に簡易式の寝床ができるようにしてあった
足元に寝袋も用意してある
その寝袋を敷き寝心地を確かめるために寝袋に入って横になってみた
下から見上げる景色は普段みなれた店内のはずなのに不思議と新鮮な感じがした
あぁ 何やら心地良いな
一度横になってしまったらそのあまりの快適さに起きるのが億劫になってしまった
もし今、お客がきたならばお帰り願うしかない
なにせお客様のために閉店時間まで開けておくために今晩家にかえれなくなるので
そのための寝場所の検証をしているので仕方ない!
これも全ては客を想う一心なのだから
きっと私ほど客のことを考えているマスターは全国にもそうはいないだろう
・・・・どうやらこの睡魔には・・・
勝てそうも・・・ない・・・
「・・・・zzzzzzz」
ここは山奥にひっそりと佇む穴場のカフェ
今日も営業中
しかしマスターの諸事情により店が開いてはいるが
誰もいないかもしれない・・・
なにやらカウンターの奥から寝言がきこえたとしてもそれは気のせいに違いない